「……お前、何しに来たんだよ」
「ん?明日解体される奴の顔拝みに。俺、復興が忙しくって明日見に行けなさそうなんよ−。だから、今日のうちに見に来たし」
「……悪趣味な奴…」
それは1947年2月24日のこと…
あの時、俺が見たのは解体される前の日のアイツだったはずで、確かにアイツは、次の日に解体されたはずやったんよ…
俺たちに墓はない
あれから何十年も時は経って、俺は元気に暮らしてる。
あの時復興を頑張ったお陰で、俺ん家は綺麗な街並みを取り戻したし。
ドイツの奴がウチに置いてった建物なんかもあって、それらは世界遺産にも登録されてるんよ。
だから、観光地として有名になったんは、ある意味戦争のおかげって言っても、間違っては無いかもしれんし。
さすが俺ん家の奴らやし。ポーランド人は転んでもただでは起きんのやし!!
―ピンポ---ン
「ドイツー!!開けろし−!!」
今日は貿易の話でドイツと約束があるんよ。難しい話は嫌いやし〜…そんなんよりパルシュキ食べたいし。パルシュキ食べてポニーの話でもするといいし!そしたら美味しいし楽しいし、一石二鳥やしっ!!
………っていうか早く出ろし〜〜ッッ!!
―ピンポピンポピンポピンポ
―ガチャ
「っるせぇなあ!!何回も鳴らすなよ!!」
? 何でコイツが出て来るんだし?
俺プロイセンには用ないし!
「ウ゛ェストなら用があって出かけたぜ」
「は!?嘘やし!!ドイツは俺と約束しとったはずやし!!」
「おまっ…ウ゛ェストとの約束は2時間前だったろうが!!
貿易の話は代わりに俺とすんぞ」
「えぇ〜、プロイセンと話すと不憫が移りそうで嫌やし…」
「遅刻しといて文句言うなよ」
しゃあ無いからコイツで我慢するし…。プロイセンに招き入れられて、俺はドイツん家に入る。
ゴツイ椅子に腰掛けて、よく片付けられたテーブルに書類を広げる。紙を見てると落書きしたくなるし…。
「コーヒーでいいか?」
「ん、頼むし〜」
足をブラブラさせて、落書きを我慢しながらコーヒーが出て来るのを待つ。
じぃぃぃ〜〜〜っと、プロイセンがコーヒーを淹れている様を眺めていると、1つの疑問が浮かんで来たし。
「なぁ、お前って何で今でも居るん?」
俺がそう聞くと、プロイセンはカップをひっくり返して驚いた。ぷぷ−、その顔まじウケるし(笑)
「…それをお前が聞くか?」
「だって、わからんし。俺はあの日、解体を明日に控えた辛気臭いお前の顔を見たし。ぷぷ−って、笑いに来たし。
次の日、ちゃんと『プロイセン解体しました』って手紙も来たし。
…なのに、何でお前はまだ居るん?」
俺が頬杖をついて、椅子をガタガタ揺らして遊んでいると、プロイセンがコーヒーを持って来て言った。
「じゃあ、お前こそ何で今ここに居るんだよ。
俺様がせっかく分割してやったのに、何でピンピンしてる?」
俺はコーヒーをくるくる回しながら答える。
「そんなん当たり前やし。俺は不死鳥やから、何度だって復活するんよ!!
お前らなんかに解体されたくらいじゃ居なくならんし!!」
プロイセンはズズズとコーヒーをすすって、ハンッ、と鼻で笑った。
「俺も同じだよ」
「?」
「文化の違いがあって、人々が俺達を捨てないでいてくれる限り、概念である俺達は消えはしねぇ」
…何なんコイツ、窓から指す夕焼け何か浴びて、ちょっと格好よく見えるとか…何か凄くムカつくし。
「そんな事はどうでもいいし〜。それよりパルシュキ食べん?俺いっぱい持って来たんよ−!!」
「おまっ!!書類の上に菓子出すなよ!!」
何でコイツが今もここに居るんかはわからん。
けど、仕事の代役のいるドイツはずるいなと思ったし。
きっと、コイツん家の奴らも、ただでは起きん不死鳥みたいな奴らんだろうな、とか、そんなんより、難しい貿易の話のがまたマシやから、パルシュキでも食べながら、仕事の話、することにしたし。
あ〜ぁ、早く帰りたいしっ