「やーっ これキライー!!」
そう言って馬鹿弟は、じじぃの手を突っぱねて泣き喚いた。
「そうかそうか…フェリはこれ、嫌いだったか」
本当は哀しいと思ってるくせに、じじぃは笑って弟の頭を撫でる。
反対の手に持ってるのは、白い色をした飴玉だった。
甘くて、しょっぱい
ひとしきり泣いて気が済んだのか、弟は「お腹すいちゃった」なんて言って、
食堂にオヤツを貰いに走って行った。
「じゃあね!おじいちゃん!!」と手を振る弟に、
じじぃは「転ぶんじゃないぞー!」と声を掛けて手を振り返す。
こっからだと、後ろ姿しか見えねぇけど、今、どんな顔してんだろ。
さっきみたいな、変な笑い顔かな。
きっと、「アイシュウ」のある背中ってのは、ああいう背中を言うんだろうな。
しばらく離れた所から様子を見ていた俺だったが、
「しゃあねえなあ」と一言悪態をついて歩き出した。
「あーあー!お腹すいたぞコノヤロー!! 飴玉でも食べたい気分だぞチクショ―が!!」
そう、デカイ声を出して言うと、驚いた様に目を見開いてじじぃが振り返った。
「おうじじぃ!! いいもん持ってんじゃねえか!! よこせコノヤロ―!」
言うと、じじぃの顔がパァッと明るくなる。
目の辺りと頬の辺りをくしゃくしゃにして、
「そうか!ロヴィはこれ、好きか!」
そう言った。
「ちぎぃっ いいから早くよこせ!!」
ずい、と手を出すと、じじぃは締りの無い顔で「そうかそうか」と何度も頷き
俺の手の上に飴玉を置いた。
「ロヴィは優しい子だな」
頭を撫でられたが、素直に喜ぶ事なんか出来なくて、
「チビ扱いすんなチクショ―!!」と、頬を膨らませて俺は走り去った。
原っぱまで来て、その場に寝そべり、飴玉越しに空を見る。
空は青くて、雲が白くて。
飴玉は、太陽の光を受けてキラキラと光った。
「……まぶしいぞ、チクショーが!」
呟いて、口へ放り込む。
甘くて、しょっぱい、不思議な味がした。
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ちびロマとおじいちゃんのお話。
小さい子相手に「いらない」とか「イヤだ!」とか言われて、
シュン…となった時におじいちゃん・おばあちゃんが醸し出す、
あの独特の哀愁がたまらなく大好きです。←
…ところで、ちびフェリが嫌いそうなお菓子…と思ってしょっぱい飴玉にしましたが
この時代にそんなモノがあったのかどうかは気にしないでください。。。